52 No Reason 第42回撮影

42回目の撮影日は2017年2月のある日。前回の撮影で制作再開をしたものの、そこから9ヶ月ほど空いてしまった。

モデルをすることが決まっていたMさんには申し訳なかったのだけれど、進展がなく半年ほどが過ぎてしまった。テーマも撮り方もまったくと言っていいほど思い浮かばなかった。

「死後の世界」というモチーフに変えて、撮り方を変えたことも大きいが、自分の固定観念が強すぎて、それを乗り越えられずにいた。

しかも、2017年になってから、記事に書いたように「自分の昔の作品を超えられないのではないかと諦めていたことに、気づいた」のだった。

ここについては補足しないと、今回の記録の意味が薄まってしまうので書いておきたい。

ご存じのように、俺は有名なフォトグラファーでも、売れっ子でもない。
それにもかかわらず、ヘアメイクさんやスタイリストさんやアシスタントをしてくれた方達は、とても協力的で制作力もすばらしかった。

 

初代ヘアメイクの鈴木あさみさんは、いまではパリで大活躍してる。

スタイリストの赤田さんは、いまは瀬戸内海でぶっとんだくらしをしているし、

鈴木めぐみさんもスタイリストを続けらていて、

みんなそれぞれの人生を歩んでいる。とても喜ばしいことだ。

 

超スーパーヘアメイクのNatsukiさんは、俺が制作をしていない間でもイベントなどで教職してもらったり、撮影仕事でもご一緒してもらっていたりで、いつも頭が上がらない(苦笑)

 

 

とにかく、手伝ってくれた方々が、ことごとく存在感が強くて、表現力も俺が求める以上のものや考えつかないものを生み出してくれた。

しかし、スタイリストさんの作品に与える影響は大きく、その不在が俺を無意識に諦めの境地に引きずり込んでいた。

スタイリストさんがいないと、昔の作品の出来を超えられないのではないか、と心のどこかで決めつけてあきらめていた。

スタイリストさんを募集する難しさも昔から知っているし、今じゃあ協力してくれる人なんて見つからないだろうと勝手に決めつけていた。

 

そのことに気づくのに、半年以上かかった。

 

 

転機は、今年の1月ごろにたまたまmixiのコミュニティで、半年前の俺の別の作品撮りでのスタイリスト募集に、「いろいろなフォトグラファーさんと作品撮りしたい」とある女性から反応があったことだった。

メッセージで経緯を説明し、半年前の作品ではなく、これから撮る「死後の世界」のスタイリングをしてくれないかと、顔合わせをして対面でお願いをしたら、何事もチャレンジしたい、と引き受けてくれた。

彼女の名前は鈴木えりかさん。

可愛らしい方でモデルもされたりしている。

そうして止まっていた歯車はふたたび動き始めた。

昔の自分の作品と向き合って、それを超えたい。

向き合わず逃げ続けて、作品を作り続けるのなんて意味がないし、そんな人生は嫌だ。

 

そんな思いを抱えながら、作品のモチーフやコンセプト、撮り方をなるべく明確にした。

モデルは昨年たまたま知り合った女性Sに頼んだ。
ありがたいことに喜んで引き受けてくれた。

 

撮影日前日、鈴木さんから体調が悪いとの相談があったのだが、どうしても困る、なんとかお願いできないかと懇願した。
彼女は、わかりました、と引き受けてくれた。ガッツがある方だなと思った。

 

そして当日。駅で待ち合わせ。
初顔合わせも多い。

 

スタジオは、これまでいくつもの疑似死体写真を撮影した明大前のスタジオ。
オーナーのY氏は、同業者なのだが、いつも快く受け入れてくれる。本当に嬉しい。

現場は、いつものようにNatsukiさんが雰囲気を作ってくれて和やかだ。

スタイリングは、テーマに沿いながらも、えりかさんの得意そうなスタイリングの方向性でお願いしたのがバッチリハマった。彼女は作品のコンセプトから「補色」というスタイリングのコンセプトを勧化てくれて、それも作品にマッチした。

Natsukiさんのメイクは相変わらず、アーティスティックで、モデルの存在感と美しさを引き立てている。

ライティングはシンプルに。カボックを使って光を抑える。

 

そして撮影開始。
参加したみんなには言っていなかったが、俺は相当に昔ここで撮影したときのことや
昔の作品を意識して、なんとか超えたい、あきらめたくない、その一心だったので、
もしかすると、無口だったかもしれない。ピリピリしていたのかもしれない。

多重露出であることを説明していたものの、何度もなんどもモデルのふたりは入れ替わり、
ポージングや立ち位置を微妙に変えたりするのはおふたりには苦痛だったと思う。

 

 

撮影時間は思ったより短く済んだ。
最終の仕上がりのイメージが明確で、その一点に集中していたのが理由かもしれない。

おまけの写真を撮る余裕もあった。


※おまけの写真の一部をトリミングしています

 

後日談ではあるが、昨秋から俺のメインマシンが壊れてしまい、サブのノートでは色が合わず作品の仕上げができなかった。予算の都合がついて速攻、メインマシンを買い換え、まず取り掛かったのは、もちろんこの作品の仕上げだった。

関係者に仕上がりデータを送ったのは撮影してからほぼひと月が経っていた。

我慢強く待っていただけたみなさんにここでもお礼を言いたいです。

ありがとうございました。

またこれに懲りずに、お願いします。

 

できあがった作品は、以前の作品を上回ったかどうかは、かなり方向性が違うので単純に評価しづらい。
いつも通り、見た人の評価に委ねるしかないのだが。

自分にとっては、また一里塚的な作品のひとつになったと思う。