「アヒルの子」「LINE」を観て。

眼科画廊タナカさんからプッシュされていた
小野さやかさん監督「アヒルの子」と、
眼科画廊のオレの個展を覗いていただいた
小谷さん監督「LINE」を、ポレポレ東中野で観てきた。

いずれも、家族との関係における生と死を
テーマにしたドキュメンタリー映画だが、
描き方がまったく違う。

「アヒルの子」は、監督が幼年期に家族から受けた
トラウマから来る怒りや憎しみを圧し殺して
生きてきた20年間の想いを、家族に打ち明け、
そのトラウマを克服し、死にたいという気持ちを
生きたい気持ちへ変えていく、というもの。

わかり合えない、と心を閉ざしていた監督は、
家族とお互いの想いをぶつけ合いながら、
少しずつ家族の想いをわかっていく。

とにかく、心情の固まりがぶつかり合う様に引き込まれる。
息苦しい空気がスクリーンに充満する。
ただ嫌とか目を背けたくなるシーンはない。
理由は書かないが、ストーリーが進むにつれ、
報われた(救われた、ではない)気分になり、
この家族が羨ましくなった。

「家族のこと、わかってますか?」
という問いかけが、監督の終戦宣言であり、勝利宣言に感じた。

映画が終わった後、小野監督と5分ほどお話しした。
眼科画廊さんから勧められたこと、舞台あいさつで
オレが感銘を受けた一節のこと、
オレの作品「No Reason」 のこと
(写真集を無理矢理プレゼントしたw)など。

20歳のときにこの作品を作り、
世に作品を出すのに6年かかった…

世に必要な作品は、いつかは世に出る。
それを信じて、オレも作品づくりに
腰を据えようと、あらためて肝に命じた。

一方の「LINE」は、小谷監督と、
年老いてノックアウト強盗に遭った
父親の関係を起点に、果ては「LINE」を
なぞって沖縄コザに行く物語。

激しい感情のぶつかり合いなどはなく、
ただただ己の内にある生と死の根源を見つめていく、
という表現で、生と死を浮き彫りにする。

コザでの一連の「見る行為」は、
写真家と近く(いや写真家そのものと言っていい。
石内都さんもトークショーに出ていたみたいだし。
石内さんの母親の皮膚を撮った一連の作品に視座は近い)、
また変態的で、とても親しみが湧いた。

ワールドカップを見たかったのでw、
そそくさと会釈だけして帰って来てしまったが、
小谷さんはファンが付きそうだし、
また見れそうな気もしたし。

小谷さんの舞台挨拶の一言目で、
作品のコンセプトが明快に表現されていて、
気持ちよかった。

「生きることは傷をつくることなんだと思います。」

地道に自分の信じることを、
コツコツと続けることが大事なんだと思う。
6年間という時間が「アヒルの子」には必要だったんだろう。

焦らず腐らずに。

誠実に、謙虚に。

そして、大阪にいる母と弟に向き合わなければ、と思った。

アヒルの子WEBサイト
http://ahiru-no-ko.com/index.html
LINE
http://line.2u2n.jp/index.html
ポレポレ東中野(上記2作品公開は、6月18日まで)
http://www.mmjp.or.jp/pole2/