2011年オレ的NO1.映画「監督失格」。

今日の15時頃に急に映画館に行きたくなった。
思えば最後に行ったのはいつだったか思い出せない。
たぶん数ヶ月だろうけどw

で、ポレポレやアップリンク、ユーロスペースのスケジュールをチェックするが、観たいものがない。

そんじゃ、というわけで吉祥寺バウスシアターを観ていると、ずっとTwitterで名前だけは見ていた「監督失格」がレイトショーでやっていて今週で上映終了なので、急遽行くことにした。

いつもの通り、事前情報は一切無し。
だが、「監督失格」はDVDも含めて2011年に観た映画の中では、オレ的No.1映画だった。いや、日本ドキュメンタリー映画史に名を残す映画ではないかと思う。

以下、ネタバレを含むが、思ったことや感じたことを書き残す。19:30に整理券配布開始に合わせて、バウスシアターへ。
5分ほど遅刻しただけなのに整理番号は003。
レイトショーにしては人気だと思った。

念のため、開場時間前に行くために、バウスシアター前のモスでWi-Fi通信して時間を潰す。このときに世界中のフォトコンペ情報サイトを見つけたので、結果有意義だったのだけれどw

会場5分前、人はそこそこいる。10人以上。

バウスシアターは何度も来ているので、5列目ぐらいの真ん中に素早く陣取る。

時間通りに映画が始まった。

画面に映るのは、林由美香。
オレの世代ならけっこう有名なAV女優だ、でもちょっと待てよ、彼女自殺したんじゃかったけ?と疑問がわき起こる。

その理由は、映画後半で明らかになる。
平野勝之監督は自殺現場の彼女の第一発見者だったのだ、
死体こそ写らないものの泣き叫ぶ林由美香の母親(野方ホープの創業者でもある)、状況把握ばかりを問答する警察に「早く来てくれ」と叫ぶ監督。

玄関先に置かれたカメラはその様子を克明に残酷かつ冷静に記録していた。

35歳の誕生日を迎える2時間前に酒と睡眠薬による事故死で林由美香はこの世を去った。そしてこの時のテープは、平野監督、制作会社、母親の三者の合意によって封印された。

「由美香が自分に張り付いていたんじゃない」

「自分が由美香とお別れしたくなかったんだ」

と気付き号泣する平野監督。
こんな簡単なことに5年間も気づかずにいた、という言葉が胸に残る。
その5年間平野監督はカメラを持てずにいた。

当時人気だった林由美香を撮ることでデビューし、
その後6年間恋心を抱き続け、ようやく恋が成就した。
そして東京から北海道の礼文島まで1ヶ月を超す自転車で撮影の旅に出る。

AVの枠組みで旅をすることに劣等感を感じ始める平野、
旅の捉え方に決定的な差違が、旅の終わりの延長に恋愛関係の終わりをにおわせる。

時が経ち、初心に戻るべく「自分の監督史」をまとめるべく、再び林由美香を撮り始めた平野監督。カメラの前で光を放つ林由美香。
その撮影期間の間に、林由美香はこの世を去ってしまう。

この映画の終わりは、平野監督なりの「林由美香との決別」で終わる。

だが、おそらく彼の心の中に林由美香は生き続ける。

 

林由美香の母の言葉が印象的だ。
「人は二度死ぬという。一度目は死んだとき。二度目は、誰からも忘れ去られたとき」と。

おそらく、この映画は冒頭に書いたように日本のドキュメンタリー映画史に名を残す名作だ。バイアスに捕われず観て欲しい。

そこには「生と死」に必至に向き合う「人間の姿」がくっきりと写っている。

公式サイト
http://k-shikkaku.com/