46 No Reason 第36回撮影

※この記事は2011年10月に書いた記事 を加筆修正したものです。

 

山本梢がオレに、
前回のオレの個展に行きたかったけど行けなかった作家さんがいま個展をしている、
なので行きませんか?
と誘ってくれた。

No Reason に興味がある人を放っては置けない。

夜に待ち合わせて個展会場へ向かった。

山田布由さん。
黒のみのペン画で、白場の使い方が印象的だった。

しばし歓談したが、なぜかオレの作品の話がしが大半を占めた記憶がある。

もちろん、彼女の作品を観賞し、
ポートフォリオも拝見して、
感想をお伝えした。

モデルを志望していただいたので、
諸々の前提事項をお話しし、
承諾をいただいた。

その日は夜で時間もなく、
日を改めて、
顔合わせを正式にしましょう、ということになった。

この個展とポートフォリオを見て、
オレは彼女の精神状態がどうあるか、という一つの推論があった。
作品は否応なく、作家の精神状態や時にはトラウマをも映し出す。

顔合わせは、某ギャラリーにて行った。
フジタさんが同席できないので、許可を得たうえで、
内容を録音した。

自分の絵の世界観の中で死にたい。
作家としては共感できる想いだ。

そして、オレは推論をぶつけた。
いま彼女は踊り場に立っている、ということ。

作家なら誰しもが通る通過点。
変化、試行錯誤、習熟、構築、崩壊を繰り返して
辿り着く。
遅かれ早かれ、多くの作家はジャンルを問わず、
そのような丘や谷を歩いて行く。

新しい自分へ。
というのがキーワードだ。

世界観は決まっている。
あとはモチーフだ。

本作では、スタジオ撮影で、
とにかく一つのセットに絞って、
その世界観を追求した。

この撮影のために、
スモークマシンを手に入れたり、
公園を黙々と彷徨い羽根を拾い集めたり。

シンプルな世界にしたかったので、
情報量をなるべく抑えてシーンを創り上げたつもりだ。

黒い羽根、黒い矢。
交錯する図形空間の世界に見るのは、
静物のみである。

絵露愚乱末世のはじまりを振り返って

2010年の12月、俺はFTPS(正式名称:Flickr Tokyo Photo Session)という写真共有サービスの草分けFlickrのグループの浅草でのオフライン・ミーティングに参加した。FTPSを主宰していたZERO Stage氏とほか何人かと、外は寒いし、そんなに慌てて街頭スナップを撮って周ることもないだろう、といいつつ、せっかく浅草にいるのだからと神谷バーで電気ブランを飲みはじめた。

そのとき「世に出せない写真があるのだけれど、いつもどうしようかと思う」という話がでた。あまりはっきりとは言わないが、どういう写真かはみなさんの想像にお任せするとして。何よりも重要なのは、断じてそれらはアートだということで(本当にここは重要!)。

誰かに見せる機会もないし、ましてやオンラインにアップロードするのもちょっと違う気がする。

ならば、「それらを展示できる機会をつくろうではないか」とふたりが意気投合し、じゃあエロだけではつまらないし、エログロぽい作品をつくる作家仲間や知り合いも多いのでみんなに協力してもらってエログロのグループ展をやろう、とプロジェクトが立ち上がった。

書いてしまうと、いたって普通だな(苦笑)。

まぁ、でも重要なのは、「機会がないならつくればいい」という発想とそれを実現する企画力と実行力
当時から現在でもエログロをテーマとした展示やイベントはあるわけで、われわれが新たに立ち上げるエログロのグループ展をどのようなコンセプトとテーマでやるか、というのが肝だった。

コンセプト自体はすぐに決まった。
なんてことはない。「18禁コーナーのあるエログロ展」だ(また身も蓋もない…w

しかしテーマをつくっている段階で東日本大震災が起き、それこそ社会状況はヒッチャカメッチャカになってしまった。自粛ムードが世間を覆ったが、結論としては、われわれは新規のエログロ・グループ展だし社会に広く知られているわけでもないし、知られようとしているわけでもない。ならば開き直ってやるしかないよね、とw

そこで、出来上がったのがキャッチコピーやDMのビジュアルイメージだった。
さまざまなジャンルの作家が集い、カオスのような展示にしたい。そのためには開き直って勢いをもって進むしかない。その当時は、そう思っていた。

エログランマッセ 絵露愚乱末世

2011年8月。ヨコハマにディープインパクト。

 

放射能がなんだ。オレたちにはエログロがあるじゃないか。

家から出て勃てよマスラオ、枕ではなく股間を濡らせよオトメ。
新進気鋭の作家達が、イマを、みらいを、誘惑する。

 

■本企画展の狙い

ポストモダン社会と呼ばれる現代では、過去に「サブカルチャー」と呼ばれていたものと「メインカルチャー」の優劣がほぼなくなりつつあります。

一方、現代美術という枠組みは曖昧さを孕みつつ、多用な表現を取り込みながら巨大化し、カオス化しています。

そのような中、あえて「サブカルチャー」の中でもメジャーな部類に入ると思われる「エログロ」というジャンルを再度見直し、新たな解釈と表現で「エログロ」の未来を探ろうとするのがこの展示の狙いです。

 

■本企画展の概要

本企画展では、総勢16名の作家が、イラストレーション、ペインティング、写真、ミクストメディアの立体、ポエトリー、人形などさまざまな作品を展示します。

展示場所は、再開発後若手アート作家達が集まりはじめている横浜の黄金町・日ノ出町・野毛エリアにある、民家を改造し2010年10月にオープンしたばかりの新進気鋭のカフェギャラリー「artmania cafe gallery yokohama」です。狭くかつ立体的な独特の建造物で16名の作家が、所せましと繰り広げる「エログロ」の新境地をぜひ、ご高覧いただき、講評を賜りたく、ご案内申し上げます。

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絵露愚乱末世公式ブログ : http://eroguro.grats.jp

絵露愚乱末世4のステートメント

「絵露愚乱末世4に寄せて」 イラスト:星之杏奈

この数年、FacebookやTwitterなどいわゆるソーシャルメディアに対するもやもやした想いをずっと抱えていたのだけれど、雑誌「考える人」に掲載されていた詩人最果タヒさんのエッセイがこの霧を晴らしてくれた。俺と同じような想いを的確に言語化し、さらには創作と独自性に立脚した個々人の存在価値を明らかにしたうえで、安易にわかったとしてしまうソーシャルメディアを通じたコミュニケーション(実のところソーシャルメディアに限定してしまうのはかなり野蛮な解釈だが)に「わからないぐらいが、ちょうどいい」と言い切るかたちで疑問を呈していた。

俺は彼女の名文に、光明を見出し、勇気をもらった。

時を同じくして、2012年9月以来、開催を凍結していた絵露愚乱末世というエログロをテーマとしたグループ展を、また開催しようという話が関係者のあいだで持ち上がった。おそらく表立ったところには書いていないが、前回の絵露愚乱末世の後、俺は二度とこのグループ展を開催したくない、と周囲に漏らしていた。

現在でこそ、よく見るようになったが、2010年前後のグループ展はギャラリーが企画・主催・運営するものが多かった。そのような中で作家自身が出展作家を集め、企画し、展示場所を探しあて手配し、告知・宣伝・集客し、搬入・展示するまでをスムーズに進行するためには、多大な労力と時間が必要だった。簡単に言えば、割に合わなかった。それが凍結の大きな理由のひとつだ。

そこから開催するまでにいたった理由を語るのは別の機会に譲ることにして、ここではステートメントを紹介して筆を置くことにする。

■絵露愚乱末世4 ステートメント

美と快楽を追求していただけなのに、いつの間にか政治家の顔や夕飯、知らない人の笑顔、唐突な広告などで画面が埋め尽くされてしまい辟易したことはありませんか。利用者のための利便性という名目で、知らず識らずのうちに私たちが目にする検索結果やSNSのフィードは非公開のアルゴリズムにその優先順位を変えられてしまい、非常に偏った情報しか得ることができなくなっています。私たちが胸を躍らせて飛び込んだ電脳の世界はいまや閉塞感と倦怠感に満ちています。

それとともに、より多くイイネを得るために、より多くシェアされるために、加工された情報がもてはやされています。ただつながっていたいだけなのに、ただ連絡を取り合えるだけで心安らぐのに、独自性の一部を削り落とすことが目的ではなかったはずなのに。数の論理に取り込まれるような友人関係など欲していなかった。誰かに伝わってほしい、気付いてほしいと発した一言が届かないことがあるなんて思いもしなかったーーー。

今回で4回目となる本グループ展では、エログロというモチーフを通して、そのような世界でも独自性を育み創作し続けている実力派の作家達の表現を一堂に集結。スマホやパソコンのスクリーンでは体験することが難しい世界観を、イイネやシェアの数では計り知れない魅力を、誰かに届けと想いを込めた作品を。
横浜みなとみらい地区と線路を隔てた野毛地区にて存在感を発揮する古民家を改造したギャラリー「artmania cafe gallery yokohama」全館に展開するこの展示を通じて、貪欲なほどリアルに提供したいと考えています。

「絵露愚乱末世4に寄せて」 イラスト:星之杏奈
「絵露愚乱末世4に寄せて」 イラスト:星之杏奈

絵露愚乱末世公式ブログ : http://eroguro.grats.jp

45 No Reason 第35回撮影

※この記事は2011年10月に書いた記事 に加筆修正しています。

 

山本梢と初めてきちんと話をしたのは、
おそらく絵露愚乱末世に彼女が出ると決めたときだから、
今年の4月ぐらいではないかと思う。

オレは、個展の度に毎回デザインフェスタ・ギャラリーにDMを
置いてもらうのだけれど、File03のDMを置いてもらうようお願いしに行ったときに、
「みんなで疑似死体」にすごく反応していたのが、梢だったと思う。

個展にも友達と見に来てくれて。

それから半年以上経って、オレから提案したのだと思うけれど、
レズビアンをテーマにした写真を撮りたい、と。
彼女は快諾してくれたのだけれど、あいにく相手がいない。

そこで二人して目を付けたのが、作家の蒼鬼さんだ。
デザフェス二日目に、二人してブースに行き、
モデルをお願いし、承諾を得た。

このとき前後して、File04のテーマと表現の方向性が
固まっていたので、それに沿うようにした。

撮影日は水曜日。
オレもフジタさんも会社を休みw、
明大前に集合。

この撮影は、二人の女性がオールヌード。

それだけしか、今は言えない。

大きく前半と後半に撮影は分かれるのだが、
natsukiさんのアイデアが炸裂した後半戦の写真を
採用することにした。

また、この作品ではオレが気合いを入れて、
小物類を自作している。

その甲斐あって、わかりやすく美しい作品になったと思う。

惜しみなく美しい肢体を披露し、
作品づくりに協力してくれた、
2人の女性作家に感謝したい。