22 廃墟ロケハン

2010年1月下旬の晴れたある日。
ボクと赤田さんはふたりで都内の中心地にある、とある古いビルにいた。

冬の朝だから、光が斜めから差している。ビルの中も明るい。いまでも事務所などがあり、住んでいる人もいるようだけれど。

建ってからの時の長さが、壁を、床を、天井を、そして空気を、確実になにか刻み込んでいる。

いやでも伝わってくる。
しかし、ここにいても、いやな感じはしない。

散策する。
立ち入り禁止の表示や、屋上の三輪車。

初めて来た場所なのに、なぜだか懐かしい。

撮影場所のあたりが付いたので、ロケハンとしては目的を果たせた。しかし、撮影交渉がこの後、たいへんな作業になることを、その時、オレはまだ知らずにいた。