No Reason 個展前書き

ちょっと日が経ってしまいましたが、個展の時に掲示していた「前書き」を掲載します。
ボクのこの作品に取り組む問題意識やスタンスが端的にまとまっているので。

DSC_9578

masashi_furuka写真展
No Reason
たぶん、生きることに、死ぬことに、理由なんていらない。
「File01: 死例001-012」

展示にあたって

本日は、masashi_furuka写真展 No Reason 「File01:死例001-012」に
ご来場いただき、誠にありがとうございます。
今回の展示は、現在制作中の疑似死体写真「No Reason」のシリーズ第一回展示となります。

現在日本では、毎年自殺者が3万人を越えており、また通り魔殺人や無差別大量殺人などが後を絶たないという社会。生死に関わる深刻な問題がある一方で、日常生活においてはこういった深刻な問題が、ある種の事なかれ主義や商業主義に比重を置いた情報伝達によって覆い隠されているかのように感じられたことはないでしょうか。
サイクリングやジョギングなどの健康ブームやロハス・エコなどやさしさ志向を声高に訴える一方で、日本に住むわたしたちの精神の健康にはなぜかバイアスがかかったようにやさしさに欠けた情報が溢れています。まるで何かに呪われているかのように。

この作品では、モデルの方々(自殺未遂経験、リストカット経験、鬱病発症、薬物依存などさまざま。精神疾患を持たない方も多い)に対して疑似死体体験を通じてあらためて自分の生死について俯瞰する機会を提供しています。モデルになっていただいた方から「すっきりした」「楽しかった」「また撮ってほしい」というポジティブな意見をいただくこともあり、この事実は私にこの作品制作を続ける大きな動機を与えてくれています。

またWEBなどで作品を見て興味を持っていただける方も多く、その大半が「生と死」について敏感に反応し、自らの「生と死」についても世相を反映した現代的な感覚を持っている方が多いと実感しています。その感覚は、おそらく私が高校生だった20年前には実感し得なかった感覚。それらを空気で感じとれる間は、今後も作品を撮り続けて、展示していきたいと考えています。


最後に、この作品は多くの方のご協力によって制作しています。この展示も、ただ一人欠けても実現しなかったと思います。ありがとうございました。
公募(すでに落選)に応募する際、ご意見をいただいた作家仲間のフジタユウコさん、ファッションデザイナー平岩さん、後輩F、ありがとうございました。
いつも助手をしてくれる後輩N、重要なメッセージをくれる月村さん、いつも支えてくれてありがとう。
モデルとしても参加している、まくずさん、ムシちゃん、あなたたちのおかげでたくさんの方にモデルになっていただくことができました。DM配りまでも…本当に感謝してます。ありがとうございました。
モデルとして参加していただいた方には、ひとりひとりに抱きついてキスしたいくらい。しませんが(笑)。みんな大好きです。
そして、制作当初から変わり者の私に愛想を尽かさず、いつも全力でヘアメイクやシーン提案をしてくださった前田麻美さん、パリに行っても明るく元気なあなたでいてください。本当にありがとう。展示が間に合って良かった(笑)

2009年11月吉日
photographer masashi_furuka