18 No Reason File01個展前書き
次の撮影の記録の前に、ここに掲載しておいた方がいいと思ったので掲載。
masashi_furuka写真展
No Reason
たぶん、生きることに、死ぬことに、理由なんていらない。
「File01: 死例001-012」
◆展示にあたって
本日は、masashi_furuka写真展 No Reason 「File01:死例001-012」にご来場いただき、誠にありがとうございます。
今回の展示は、現在制作中の疑似死体写真「No Reason」のシリーズ第一回展示となります。
現在日本では、毎年自殺者が3万人を越えており、また通り魔殺人や無差別大量殺人などが後を絶たないという社会。
生死に関わる深刻な問題がある一方で、日常生活においてはこういった深刻な問題が、ある種の事なかれ主義や商業主義に比重を置いた情報伝達によって覆い隠されているかのように感じられたことはないでしょうか。
サイクリングやジョギングなどの健康ブームやロハス・エコなどやさしさ志向を声高に訴える一方で、日本に住むわたしたちの精神の健康にはなぜかバイアスがかかったようにやさしさに欠けた情報が溢れています。
まるで何かに呪われているかのように。
この作品では、モデルの方々(自殺未遂経験、リストカット経験、鬱病発症、薬物依存などさまざま。
精神疾患を持たない方も多い)に対して疑似死体体験を通じてあらためて自分の生死について俯瞰する機会を提供しています。
モデルになっていただいた方から「すっきりした」「楽しかった」「また撮ってほしい」というポジティブな意見をいただくこともあり、この事実は私にこの作品制作を続ける大きな動機を与えてくれています。
またWEBなどで作品を見て興味を持っていただける方も多く、その大半が「生と死」について敏感に反応し、自らの「生と死」についても世相を反映した現代的な感覚を持っている方が多いと実感しています。
その感覚は、おそらく私が高校生だった20年前には実感し得なかった感覚。
それらを空気で感じとれる間は、今後も作品を撮り続けて、展示していきたいと考えています。
最後に、この作品は多くの方のご協力によって制作しています。
この展示も、ただ一人欠けても実現しなかったと思います。ありがとうございました。
公募(すでに落選)に応募する際、ご意見をいただいた作家仲間のフジタユウコさん、ファッションデザイナー平岩さん、後輩F、ありがとうございました。いつも助手をしてくれる後輩N、重要なメッセージをくれる月村さん、いつも支えてくれてありがとう。
モデルとしても参加している、まくずさん、ムシちゃん、あなたたちのおかげでたくさんの方にモデルになっていただくことができました。DM配りまでも…本当に感謝してます。
ありがとうございました。
モデルとして参加していただいた方には、ひとりひとりに抱きついてキスしたいくらい。しませんが(笑)。みんな大好きです。
そして、制作当初から変わり者の私に愛想を尽かさず、いつも全力でヘアメイクやシーン提案をしてくださった前田麻美さん、パリに行っても明るく元気なあなたでいてください。
本当にありがとう。
展示が間に合って良かった(笑)
2009年11月吉日
photographer masashi_furuka
17 No Reason第10回撮影
第10回の撮影は、これまでの撮影で現場にもっとも関係者が多く集まる撮影になった。
以下、箇条書きで参加者をご紹介しておく。
・モデル miyakenさん
・モデル まりちゃん
・ヘアメイク Natsukiさん
・スタイリスト 赤田さん
・スタイリスト助手 ゆかさん
・見学ww きよたさん
・撮影助手、記録 ツキムラさん
・撮影 masashi_furuka
時 間は前後するが、第9回撮影の前には、モデルのmiyakenさん(about tess のベーシスト)と撮影シーンを摺り合わせており、その後mixiでの協力者募集に応募いただいた、スタイリストの赤田さん、ヘアメイクの Natsukiさんと個別にお会いし、作品の説明やオレという人間、そして第10回の撮影シーンについてお話ししていた。
関係者も多く、オレもみなさんも忙しくて、撮影までに顔合わせはきなかった。
その間、メールでのやり取りのみ。
オレがまりちゃんの衣装の方向性を決めるのに時間がかかり、なかなか連絡できず、自分のせいでちょっと不安だったけど、腹を決めた。
確信していた。
コンセプトをぶらさずにいれば必ず良い画が撮れる、と。
現場に入ると、白い布を敷き、セッティングに入る。ライティングを極力フラットに、していく。
白い世界。
永遠とも思える中にしかし、確かに存在する縮小した時間。
それを表現していく。
赤田さんのスタイリング。
まりちゃんのドレスがかわいくも美しい。
miyakenさんの三揃えのスーツも意志の強さを感じさせる。
Natsukiさんのヘアメイク。
miyakenさんがどんどん凍っていく、それと同時にmiyakenさんの気持ちも設定に入っていく。
シュート開始。
途中、赤田さんのアイデアで、蜘蛛の巣が張ったようなものが命を持って行く。
留まることを知らない、悠久の時間。
結局、オレのわがままで予定の時間をオーバーし、スタジオの時間を延長。
それにお付き合いいただいた参加者各位にお礼を申し上げたい。
本当にありがとうございました。
モデルをしてくれたまりちゃんの言葉が、いまでも心に残る。
「みんな本当に真剣に本気で作品をつくっていて、それに自分も参加できたことがすごくうれしい」
そして、この写真は、File02のDMの写真になった。
白い世界。
凍え死にしていくのは、
人ではなく、
世界なのだろう。
16 No Reason 第9回撮影
今回のモデルは、ぐぬぬさんとかなちゃん。
ぐぬぬさんは撮影することが決まってから、
「これで死にたい!」
というのが明確にあり、撮影までの間、かなり盛り上がっていたww
かなちゃんの衣装はオレとお兄ちゃんのたっての希望でw、制服に決まった。
撮影場所は、ラブホテルも考えたのだけれど、立ち会いのお兄ちゃんが我慢できなくなるので断念したという経緯もw
実際のロケ地は、以前東京のいろんな場所でスナップを撮り回っていた頃に印象深かった永代橋と、その近くの隅田川沿いの遊歩道。
ヘアメイクは特殊メイクができる清田さんにお願いした。
撮影当日はくもり。
雨は降らないながらも、肌寒い。秋の曇天。
門前仲町に集合して、途中コンビニで小道具に使う豆腐を購入ww
撮影地に到着し、いざ構図を決めようとすると・・
!!!
メモリーカードを忘れたことに気づく。
ありえない大失態!
近くのコンビニを探すも「SDカード」しかない。門前仲町駅近くを駆けずり回るも電気屋は1件しか無くそこでも置いてない、といわれる。
茫然とする頭を切り換えて、腹を据え、タクシーで有楽町のビッグカメラへ。
本当にすみませんでした。
メモリーカードを購入し戻ってくると、メイクができあがっていて、ぐぬぬさんのこめかみに穴が空いているw
シュート開始。
遠くには月島の高層マンション。
空高く抜けのよい秋空。
数年前にスナップして回ったときに思っていたけれど、なぜこんなにもここは空虚なのだろう。
いぶかしげに撮影を見るご老人。
何度も何度もこちらを振り返っていた。
あまり時間はかけられないな、と思う。
角度を変え、用意していた望遠レンズに変え、走り、遠くから撮る。
撮りたいイメージがあったので、No Reasonの撮影には珍しく望遠レンズも持ってきていたのが的中した。
こういうのがハマるとノる。
次はかなちゃん。
すでに日がかなり落ちて寒い。
暗いのでメイクする清田さんの手も震える。
それぐらいの悪条件。
やがて永代橋に灯がともる。
青い世界。
目が覚めるような青。
かなちゃんのメイク&着替え終了。
すでに日が落ちて暗い。
ライティングをお兄ちゃんとぐぬぬさんに手伝っていただき、なんとか光をコントロール。
撮影終了。
なんとも言えない切ない画になった。
がんばってくれたお礼に、撮影に使ったテディーベアをかなちゃんにプレゼント。
その後、ぐぬぬさんは帰りの電車で、銃創をつけたままだったそうだww
メイクというのは、本当に人の気分を変えてしまう魔法だ。
たとえ魔法の効果が切れた後でも、少しでも、ほんの少しだけでも、その気分の高鳴りを憶えていて欲しい。
そう思った。