48 No Reason 第38回撮影

※この記事は2012年8月に書いた記事 を加筆修正したものです。

 

この撮影のモデルは、はつかさんという女性。

いつものごとくこの制作記録は時が激しく前後するがご容赦願いたい。

そして、いまオレは公式サイトのモデル募集のリビジョンの記録をチェックしている。
記録によると、2011年2月14日にモデル募集受け付けを一時停止した。
ちょうど、No Reason Digital Bookを編集しているときだ。
このときに、これまでのFile:01 から File : 03 までを再編集しながら、
File : 04 のコンセプトを詰めていた。

そして、File : 04 のコンセプトがほぼ詰まった頃に東日本大震災が起こった。
第34回以降書いているように、震災以降も撮るべきモデルさんがいたので、
募集再開はかなり先で、再開したのは2011年7月4日だった。

そして、3日後にはつかさんからモデルへの応募があった。
2010年11月にオレが個展宣伝のために出たデザインフェスタで興味を持って
いただいたことが書かれていた。

顔合わせは7月26日。
二十歳すぎの学生さんにしては、ラカンをご存知でその辺の話しを中心に話したように思う。
そして、このときに衣装のコンセプトは固まっていた。

スレンダーで背が高いので、女装男性という設定でドラァグ・クイーンが似合うと思ったのだ。

設定が決まったが、その後ことごとくオレとスタイリストの鈴木さんとの日程が合わず、
撮影日を決めては延期が続く。

本当に心底申し訳ないと思っていた。
シーンのイメージは固まっているし、小道具も用意したが、結局撮影できたのは、
年が明けて、2012年の4月2日だった。

モデル募集を閉鎖していた機関を会わせると、都合一年ほど待たせてしまったことになる。
しかし、妥協しては逆に失礼だと(オレは)思うので、みんなのタイミングが合うまで
調整し続けるしかない。腹を括るしかないのだ。

当初はロケを考えていたのだが、ヘアメイクのしやすさと
小道具のコントロールのしやすさを重視してスタジオにした。

小道具用のスプレー塗料のシンナーがスタジオに充満し、
その臭いが強烈でみんなから「外でやってくれ!」とダメ出しがでるwww

Natsukiさんのヘアメイクと鈴木さんのスタイリングもばっちりだ。
2回目とは思えないほど、現場の雰囲気もいい(これはNatsukiさん、
鈴木さん、フジタヨーヘーさんのおかげなのだが

セッティングもいたってシンプル。

ポイントはスタイリングもそうなのだが、
設定に合わせた小道具とモデルのポージングだ。

この作品も合成を前提としているので、撮るべきポイントを抑えて、
後は追い込む。

はつかさんは微動だにしない。
それほど楽な姿勢ではないのだけれど。

空間に溶け込み、飛び交う小道具を気にかける気配すらなく、
その視線はうつろに一点を、いや床を突き抜けて、
地球の裏側の空に浮かぶ星を見ているかのようだ。

ポージングはひとつしか撮らなかった。
シーンはあたまの中に明確にあったので、
それに近づくよう追い込みたかったから。

そして、撮影終了。

オレは、はつかさんの一年分の想いに応えられただろうか。
いま、それはわからない。

でも、きっとこの作品を公開するとき、
なにか伝わるものがあると、そう信じている。

※写真は撮影風景(撮影フジタヨーヘー氏

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47 No Reason 第37回撮影

※この記事は2012年1月に書いた記事 を加筆修正したものです。

 

撮影は秋もすぐそこで、しとしと雨が降るなか、
とある公園ロケだった。

前回の撮影からは、おそらく三ヶ月ほど空いただろうか。

その間、絵露愚乱末世というエログロをテーマとしたグループ展を企画し、オレ自身も新作を出した。
「贄」という作品で、撮影は半日を二回だけ。

大半の時間をグループ展の企画や進行などもろもろの運営作業に費やしたことになる。

しかし、No Reason の制作が進まなかった理由は、
スタイリストさんを探していたからだった。
赤田さんが忙しく、海外に行かれることも多く、
なかなかお願いできないからだ。

新しいスタイリストさんは鈴木めぐみさんという。
例によって、mixiの募集に応募してくれたのは一人だけw

もう慣れたからどうとないとないけどw

何度か顔を合わせ、打ち合わせをした。

そして、今回のモデルはSさん。
あるジャンルではとても有名な方なのだが、
名前は伏せさせていただく。

この方は、Natsukiさんの紹介で知り合った。

例によって希望の死に方を聞くと、
「ぐちゃぐちゃで死にたい」
と。

というわけで、土の中でぐちゃぐちゃになってもらうことにした。

ロケハンをして、Sさんの家から近くの公園で、
いい場所を探した。
偶然ではあるけれども、その公園にとても魅力的な場所があった。

そして、撮影方法も新しい撮り方を試したのだが、
道具が手作りの木製で、カメラとレンズを支えきれず、
結局水平器を頼りに、勘で撮影することに(汗

小雨が降る。

メイクはSさんの家でほぼ済んでおり、
現場でのスタイリング。

「もっと切って」
とだけ、注文して、オレはカメラの方へまた
戻って行く。

「戻る」というだけの多少の距離はあったのだ。

Sさんの疑似死体への入りもスムーズだった。
まるで小雨の一粒一粒が針で、彼女の柔らかな肌を
串刺しにしていくかのように、静かに冷酷な空気が漂った。

寒いのに、本当にありがとう。Sさん。
Natsukiさん、鈴木さん、フジタさん。

この作品のモチーフは、ヘラという女神。
ゼウスの姉であり妻があったといわれる神がモチーフだ。

なぜ彼女が死んでいるのか、
それは神でさえわからないだろう。

46 No Reason 第36回撮影

※この記事は2011年10月に書いた記事 を加筆修正したものです。

 

山本梢がオレに、
前回のオレの個展に行きたかったけど行けなかった作家さんがいま個展をしている、
なので行きませんか?
と誘ってくれた。

No Reason に興味がある人を放っては置けない。

夜に待ち合わせて個展会場へ向かった。

山田布由さん。
黒のみのペン画で、白場の使い方が印象的だった。

しばし歓談したが、なぜかオレの作品の話がしが大半を占めた記憶がある。

もちろん、彼女の作品を観賞し、
ポートフォリオも拝見して、
感想をお伝えした。

モデルを志望していただいたので、
諸々の前提事項をお話しし、
承諾をいただいた。

その日は夜で時間もなく、
日を改めて、
顔合わせを正式にしましょう、ということになった。

この個展とポートフォリオを見て、
オレは彼女の精神状態がどうあるか、という一つの推論があった。
作品は否応なく、作家の精神状態や時にはトラウマをも映し出す。

顔合わせは、某ギャラリーにて行った。
フジタさんが同席できないので、許可を得たうえで、
内容を録音した。

自分の絵の世界観の中で死にたい。
作家としては共感できる想いだ。

そして、オレは推論をぶつけた。
いま彼女は踊り場に立っている、ということ。

作家なら誰しもが通る通過点。
変化、試行錯誤、習熟、構築、崩壊を繰り返して
辿り着く。
遅かれ早かれ、多くの作家はジャンルを問わず、
そのような丘や谷を歩いて行く。

新しい自分へ。
というのがキーワードだ。

世界観は決まっている。
あとはモチーフだ。

本作では、スタジオ撮影で、
とにかく一つのセットに絞って、
その世界観を追求した。

この撮影のために、
スモークマシンを手に入れたり、
公園を黙々と彷徨い羽根を拾い集めたり。

シンプルな世界にしたかったので、
情報量をなるべく抑えてシーンを創り上げたつもりだ。

黒い羽根、黒い矢。
交錯する図形空間の世界に見るのは、
静物のみである。

45 No Reason 第35回撮影

※この記事は2011年10月に書いた記事 に加筆修正しています。

 

山本梢と初めてきちんと話をしたのは、
おそらく絵露愚乱末世に彼女が出ると決めたときだから、
今年の4月ぐらいではないかと思う。

オレは、個展の度に毎回デザインフェスタ・ギャラリーにDMを
置いてもらうのだけれど、File03のDMを置いてもらうようお願いしに行ったときに、
「みんなで疑似死体」にすごく反応していたのが、梢だったと思う。

個展にも友達と見に来てくれて。

それから半年以上経って、オレから提案したのだと思うけれど、
レズビアンをテーマにした写真を撮りたい、と。
彼女は快諾してくれたのだけれど、あいにく相手がいない。

そこで二人して目を付けたのが、作家の蒼鬼さんだ。
デザフェス二日目に、二人してブースに行き、
モデルをお願いし、承諾を得た。

このとき前後して、File04のテーマと表現の方向性が
固まっていたので、それに沿うようにした。

撮影日は水曜日。
オレもフジタさんも会社を休みw、
明大前に集合。

この撮影は、二人の女性がオールヌード。

それだけしか、今は言えない。

大きく前半と後半に撮影は分かれるのだが、
natsukiさんのアイデアが炸裂した後半戦の写真を
採用することにした。

また、この作品ではオレが気合いを入れて、
小物類を自作している。

その甲斐あって、わかりやすく美しい作品になったと思う。

惜しみなく美しい肢体を披露し、
作品づくりに協力してくれた、
2人の女性作家に感謝したい。

44 No Reason 第34回撮影

※この記事は2011年5月に書いた記事 に加筆修正しています。

 

33回の撮影が2011年の2月末。
それから次の撮影まで、
1ヶ月以上空いた。

言うまでもない。
東日本大震災があったためだ。

モデルさんはすでに決まっていた。
ホームページを見て、
mixiのメッセで応募してきて
くださった。

彼女は非日常的な世界での死を
希望されていたのだが、
震災などもあったため、
オレの思考がまとまらなかった。

シーンを思い浮かべるきっかけに
なったのは、皮肉ながら、
知り合いが被災状況を
教えてくれたことだった。

撮影は被災地を選んだ。

モデルのあやねさんも、
了解してくれた。

ロケハンをしようと思っていたが、
Webを検索すれば、詳しい町名まで書いた被災状況のわかる写真があったので、
見当はついた。

撮影シーンはリアル路線なので、
オレとあやねさんだけ。
顔合わせも都合が合わず、 撮影当日に。
そしてロケ地にいくまでに概要を説明。

ロケ地を歩く。

いたるところに地震の爪痕が
生々しく残っている。

フォトジェニックな場所を選んで、
2シーンを撮影した。

不届き者だと思う方も
いるだろう。

でも、オレは今回の震災で
お亡くなりになった方々とは、
別のテーマを扱っている。

震災でオレの作品テーマが変わることはない。

不謹慎ながら、
外国のニュースサイトで、
被災された方の遺体写真をいくつも見た。

ご冥福をお祈りするしかない。

そして、オレは
揺るぎないテーマを持って
作品を創り続けるしかない。

撮影後、あやねさんと、
駅前のファーストフードで
いろいろ話した。

珍しい経歴の持ち主なのだが、
今後も被写体として、
他の作品に登場いただく予定なので、
ここでは伏せておくw

最後に、撮影は、
砂埃がひどく、
たいへん難儀したことだけ、
お伝えしておこう。